
仕事に家事や育児を終え、ようやく自分の時間。でも横になっても、仕事のことや、明日の準備、返し忘れたメッセージが次々と頭に浮かんでくる——。
そんな夜を、繰り返していませんか。
「眠れないのは、気持ちの問題だ」と思いがちですが、じつはそうではありません。仕事や育児でフル稼働した後、脳と身体は「まだ戦闘モード」のままになっていることがあります。原因は、自律神経の切り替えがうまくいっていないことにあります。
この記事では、頭が冴えて眠れない夜のメカニズムと、お風呂の時間を使って脳のスイッチをオフにするための方法をお伝えします。
1. 「眠れない」のは、脳がまだ「戦闘モード」だから
人の身体には、活動と休息を調整する仕組みとして、自律神経が働いています。昼間や緊張・集中が必要な場面では交感神経が優位になり、心拍数が上がり、脳が覚醒した状態になります。眠りにつくためには、これとは逆の副交感神経が優位になり、身体が「休んでいい」と判断する状態に移行する必要があります。
問題は、現代の生活ではこの切り替えが起きにくくなっていることです。
なぜ、仕事・育児の後は「切り替え」が難しいのか
スマートフォンやPCの画面から発せられるブルーライト、次々と届く通知、頭の中でループし続けるToDoリスト。これらはすべて、脳に「まだ活動しなければならない」というシグナルを送り続けます。
また、育児中の方は、子どもが寝た後も「何かあったときのために」神経を張り続けるため、身体は横になっていても、脳は完全にはリラックスできていない状態が続くことがあります。
夜になっても交感神経が優位なままでいると、脳内では覚醒を促すホルモンが分泌され続け、自然な眠気が起きにくくなります。「眠れない」「眠りが浅い」という訴えの背景に、こうした自律神経の問題が関係していることが報告されています(*¹)。
2. お風呂は「体温のリセット装置」。でも、それだけではない
就寝前の入浴が睡眠の質に関係することは、多くの研究で報告されています(*²)。その仕組みのひとつが、「深部体温の低下」です。
入浴によって一時的に身体の内部の温度(深部体温)が上がり、お風呂から出た後に放熱されて体温が下がるとき、身体は眠りに向けた準備に入りやすくなると考えられています。就寝の90分〜1時間前の入浴が推奨されることが多いのは、この体温変化のタイミングに関係しています。
嗅覚という「最速の感覚」を使う
体温のリセット以外にも、お風呂の時間に活かせるアプローチがあります。それが嗅覚です。
嗅覚は五感のなかでも特別な経路を持っています。目や耳から入った情報は大脳の思考・判断エリアを経由しますが、鼻から入った香りの信号は、感情や記憶を司る「大脳辺縁系」にほぼ直接届きます。これが、特定の香りをかいだ瞬間に気分が変わったり、昔の記憶が呼び起こされたりする理由です。
この仕組みを利用することで、お風呂の時間を「脳のスイッチを切り替えるための場所」として意識的に使うことができます。

3. 杉の香りと自律神経。研究が示していること
お風呂で嗅覚に働きかける素材として、近年研究が進んでいるのが杉(スギ)の精油です。
杉をはじめとする針葉樹には、「フィトンチッド」と呼ばれる揮発性成分が含まれています。その主成分のひとつα-ピネンは、嗅覚への刺激を通じて自律神経活動に変化をもたらすことが報告されています。
森林総合研究所の研究報告
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所は、「木材由来のにおい成分α-ピネンは人をリラックスさせる」という研究結果を2017年に発表しています(*³)。
また、千葉大学大学院の研究(2016年、国際誌 Journal of Wood Science 掲載)では、α-ピネンによる嗅覚刺激が心拍変動や脳の酸化ヘモグロビン濃度に有意な影響を与えることが示されています(*⁴)。
| 木材由来の香り成分を嗅ぐことで、自律神経の副交感神経活動が高まり、被験者の心理的なリラックス感が得られることが確認された。— 森林総合研究所(2017年)研究内容の概要より |
4. 3分間、「脳のオフ」をつくるお風呂の使い方
では、実際にどうすればいいか。難しいことは必要ありません。毎日のお風呂の時間に、小さな意識を加えるだけです。
Step 1:スマホをバスルームに持ち込まない
これが最も重要です。通知を手元に置いたまま入浴しても、脳は「待機モード」を解除できません。バスルームを、スマホから切り離された唯一の空間にしてみてください。
Step 2:シャンプーの香りを、意識的に吸い込む
シャンプーを手に取ったとき、泡立てているとき、すすいでいるとき。「今、どんな香りがするだろう」と意識を向けることで、嗅覚への注意が高まります。この小さな意識の切り替えが、思考の連鎖を止めるきっかけになります。
使用するシャンプーに天然の木の精油が含まれていれば、フィトンチッドの揮発性成分がシャワーの蒸気とともに空間に広がり、嗅覚を通じて自律神経活動に変化をもたらしやすくなります。
Step 3:湯船に浸かる場合は「今日を手放す時間」と決める
湯船に浸かっている時間を「今日起きたことを手放す時間」と意識的に定義してみてください。今日うまくいかなかったこと、まだ終わっていないこと——それらは明日の朝に考えればいい、と脳に伝える儀式として使います。

5. 天然精油のシャンプーを選ぶ理由
先述のα-ピネンなどフィトンチッドの揮発性成分による嗅覚への作用は、天然の植物精油に含まれる成分に関する研究です。成分表示に「Parfum(香料)」とだけ書かれた合成香料で再現された「木の香り」とは、成分的に異なります。
お風呂の時間を意識的なリカバリーの場として使いたいなら、成分表に植物の学名が記載された天然精油配合のシャンプーを選ぶことが、ひとつの基準になります。
天然回帰のシャンプーについて
天然回帰のシャンプーには、宮城県登米産の杉間伐材を原料に自社蒸留した精油を配合しています。成分表には「スギ枝/葉油」と記載されており、フィトンチッドの主成分であるα-ピネンを含む天然の杉精油です。
アミノ酸系洗浄成分をベースにした低刺激設計で、毎日の使用を想定した処方になっています。トリートメントと組み合わせることで、香りの体験を豊かにしながら使い続けていただけます。
まとめ
頭が冴えて眠れない夜の原因のひとつは、交感神経が優位なまま、脳が「まだ動き続けようとしている」ことにあります。
お風呂の時間は、体温のリセットだけでなく、嗅覚を通じて自律神経の切り替えを促すための場所として使うことができます。スマホを持ち込まず、香りに意識を向ける3分間。その小さな習慣が、脳に「今日は終わった」と伝えるきっかけになるかもしれません。

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→「ノンシリコンなのに、なぜなめらか?アミノ酸系シャンプーの成分と選び方」(近日公開)
参考文献・引用元
*¹ 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
*² Kanda K et al.(2021)”Effects of bathing before sleep on body temperature and sleep quality.” Sleep Medicine, 78.
*³ 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所(2017年)「木材由来のにおい成分α-ピネンは人をリラックスさせる」
*⁴ Ikei H, Song C, Miyazaki Y(2016)”Effects of olfactory stimulation by α-pinene on autonomic nervous activity.” Journal of Wood Science, 62, pp.568–572